MAIL MAGAZINE Vol.10 2018
東京の真ん中で、人種のるつぼを感じさせるファミレス
東京・有楽町、金曜の夜10時半。まもなく二次会も終わるこの時間に、あらゆる種類の人間が流れ着く漂流所のような店がある。晴海通り沿い、有楽町マリオンの斜向かいにある「ジョナサン 有楽町店」だ。
まず訪日外国人客が多い。皆、「中に人間でも入っているのかしら」と思うほど大きなキャスターをガラガラと引き、御一行様となってやってくる。中国、台湾、香港、韓国はもちろんのこと、東南アジア、中東の方々も多い。彼らを眺めていると、狙い目がドリンクバーであることに気づく。
何杯飲んでも値段の変わらないドリンクバー。きっとファミレスは、外国人旅行者にとってオアシスのような空間なのだろう。さまざまなフレーバーの紅茶を試したり、ジュースを飲み比べたりする。緊張のほぐれた彼らは夜11時前だというのに、飲むわ、食べるわ。東京の真ん中で、ホッと一息つく空間を思い思いに楽しんでいた。
日本人もさまざまな人が集まっていた。個人残業するサラリーマン、売上確認に余念のない店長、丸の内鍛冶橋バスターミナルからの深夜バス待ちをする若者。そのほか銀座で食事を堪能した主婦やOLに、外堀通りが近いせいか水商売関係の方々も。
私は、左がホストクラブの反省会、右がマーケターの面接というカオスな席に通された。女性オーナーと3人の若い幹部ホストは店と変わらない音量で話すので、とにかく声が大きい。やる気のないホストがいること、シフトの組み方が良くないこと、お客さんへの目配りが足りていないこと、今日の店の回しは良くなかったこと。もう店の問題が丸聞こえなのである。
ステレオでいうところの左スピーカーが大音量のため、右テーブルで面接を受けるマーケター女子が、声を張って必死に自分のアピールをする。彼女にとって、この店で面接を受けることが吉と出るのか凶と出るのか。
入店すると、自分がブイヤベースの具にでもなった気がするこの店をお暇する時間がやってきた。夜12時前、店内はまだ満卓だ。外国人旅行客は、もしかすると泊まるつもりなのかもしれない。でも大丈夫だ。「ジョナサン 有楽町店」は24時間営業なのだ。
ライター／横山由希路
