六本木の中にある緑豊かな美術館
緑の芝と遊歩道の上に、底辺が長く高さのない逆三角形の屋根が2つ、ヒマラヤ杉を背に浮かんで見える。鉄板加工による三角形の屋根の底辺は、54メートル。この大きな三角形は、ファッションデザイナー・三宅一生が服作りをする「一枚の布」を、建築家・安藤忠雄が視覚的に捉えて設計したものだ。
ここは、三宅が熱望して2007年にオープンしたデザイン美術館・21_21 DESIGN SIGHT。主要な建物の周囲を約180度緑地で囲む六本木・東京ミッドタウンの中でも、乃木坂寄りの「ミッドタウン・ガーデン」内にある。
三宅とともに美術館のディレクターを務めるのは、NHK Eテレ『にほんごであそぼ』のアートディレクションなどを手がける佐藤卓、世界を代表するブランドのプロダクトデザインを行う深澤直人。そしてアソシエイト・ディレクターを務めるジャーナリストの川上典李子。4人が中心となり、展示会のテーマについて話し合う。
21_21 DESIGN SIGHTの特徴は、床面積の8割が地下に潜る建築構造を生かし、音の鳴る展示が多いこと。一番反響が大きかったのは、佐藤が番組指導を行うNHK Eテレ『デザインあ』の企画展。2013年度ADCグランプリをはじめ、多くの賞に輝いた。また、この展示でディレクションと音楽を務めた中村勇吾とミュージシャンのCorneliusが再びタッグを組んだ「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」も話題を呼んだ。
現在は、「民藝 MINGEI- Another Kind of Art展」が2月24日(日)まで開催中だ。民衆の用いる日常品の美しさに着目し、柳宗悦が名づけた「民藝」を、日本民藝館館長でもある深澤が同館の誇る新旧所蔵品約100点を選んでいる。
六本木は今や、上野を凌ぐアートエリアだ。周辺には国立新美術館、森美術館をはじめ、サントリー美術館やFUJIFILM SQUARE、AXIS、TOTOギャラリー・間などが徒歩圏内にある。ただし緑に囲まれた立地は、21_21 DESIGN SIGHTだけ。港区立檜町公園に続く緑地は、この時期140本もあるサクラやクスノキの紅葉が見られ、樹木1本1本に虹色のライトアップが施される。
オススメは、土日16時頃の入館だ。鑑賞後に外に出ると、色づいた葉が光に照らされ、サラサラと音を立てて落ちる様が楽しめる。六本木界隈でもっともアートを感じる屋外は、秋の夕暮れ時、21_21 DESIGN SIGHTから外に出た瞬間なのかもしれない。
ライター/横山由希路
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