MAIL MAGAZINE Vol.3 2019
マニアックすぎて半日時間がつぶせそうな書店
「鉄道・アイドル・プロレス・ミリタリー・コンピューター 趣味人専用書店!!」。10階建てのビル上段から掲げられた横断幕が振るっている。ここは秋葉原にある書泉ブックタワー。1フロアの面積が約100平米と狭く、売場は9階まである。
天井からやたらとポスターを吊す。さらに挿し木をするように、書棚に宣伝ポップを縦刺しにする。伝えたい熱量だけで、見やすさは度外視。狭い売場に1冊でも多く本を置こうと、書店員さんが働きまくる。まるでドン・キホーテの書店版みたいだ。
1階入口の平積だけは、マトモであった。伺ったときは、芥川・直木賞の受賞者による著書と、大河ドラマ『いだてん』関連書籍が並んでいた。ただし裏の平積は「買ったら損する人気商品」「人気マンガ・アニメのトラウマ最終回」など、「サブカル担当がオススメする面白い本」と題したおどろおどろしい本ばかり。そのほかライトノベルや漫画原作で知られる西尾維新だけの書棚、寺院系のコーナーなど、通常メインフロアで目にしないラインアップだ。
2階は経済書・ビジネス書・文庫・新刊などが揃い、ごく普通の書店の雰囲気。その中でも、スティーブ・ジョブズ、Google、ソフトバンク、堀江貴文、松下幸之助、稲盛和夫だけを集めた書棚があって驚く。4階は競馬、プロレス、野球、ゴルフ、フィギュアスケート、ランニング、登山、天体観測、イケメン男性俳優、ジャニーズアイドルなどのほか、特撮の棚が幅を利かせる。
5階に上がると爆音が聞こえる。ミリタリーコーナーだ。陸上自衛隊『平成30年度富士総合火力演習』の映像が流れていた。軍艦、戦闘機、戦車などの書籍のほか、海上自衛隊グッズや海軍カレーも揃う。5階の反対側は鉄道だ。山手線、京浜東北線の駅表示を模した紹介プレートが、鉄道ファンの心をガッチリ掴む。時刻表、鉄道雑誌のバックナンバーはもちろん、首都圏私鉄各社のグッズも並ぶ。
途中、こんな場面を目にした。「これはダイヤ改正前の時刻表じゃないんですか!?」。熱心な鉄道ファンの質問に、担当の店員さんが押され気味だった。マニアの来店はいつも真剣勝負。書泉ブックタワーのスタッフは、一朝一夕にできることではないのだ。
ライター／横山由希路
