夜は1人で行ってはダメ! 都内唯一となる茨城天然鮟鱇の店
仕事をご一緒している編集者に連れられて行ったのは、東京・京橋と八丁堀の間にある産地直送居酒屋だった。ランチで出てきた海鮮丼は、北茨城市平潟港から直送された新鮮で大きな刺身を丸めて重ねて盛り付けてある。焼き魚定食も煮魚定食も魚が大きい。「でもこの店の醍醐味はランチじゃない。夜に来ないと」と編集者は言う。店の名前は「鮟鱇 篠げん」。“天然国産” “生” “丸一匹”をモットーとする都内唯一となる茨城鮟鱇の店なのだ。
「篠げん」の原点は、茨城・平潟港にある「民宿しのはら」。「しのはら」は、水も酒も一切使わない昔ながらの無水製法で作る鮟鱇鍋「どぶ汁」を提供することで有名だ。鮮魚の仲買をしているため、「しのはら」のオーナー自ら目利きをし、競り落とした鮟鱇が丸々一匹「篠げん」に送られる。普通の居酒屋と思いきや、夜はカウンター席の目の前で、鮟鱇を吊るし切りする大胆不敵な店に変貌する。大きいものだと30キロはあるという。
「どぶ汁」の水分は鮟鱇の身のみ。そこにあん肝を乾煎りし、味噌で仕立てる。野菜は大根とネギだけとシンプルだ。鮟鱇から出る肝油でオレンジ色に汁が濁る様をどぶろくに見立て、「どぶ汁」と名付けられたが、スープは見た目と相まってスッキリした味わい。ただし「骨以外は捨てるところがない」と店の方が豪語するだけあって、旨味が非常に凝縮している。コラーゲンたっぷりで、美容が気になる女性客にも喜ばれるはずだ。
そのほか「どぶ汁」と一緒に食べたいのは「とも酢」。これは蒸した身と茹でた皮、アラを、鮟鱇自らのゼラチンで固めたものだ。それをあん肝の入った酢味噌でいただく。「別注あんこう薩摩揚げ」や「イカゲソのコロコロ揚げ」もオススメしたい。平潟港の練り物屋に「篠げん」が特注でお願いしている代物で、お酒が進んで仕方がない。また店で捌いたものをその場で蒸し上げる「あん肝」も絶品だ。
どんこ、めひかりなど、北茨城でないとなかなか味わえない魚が食べられるのも「篠げん」のいいところ。思わず1人でふらっと入ってしまいそうだが、最低1人は誘って店に入りたい。鮟鱇の魅力を堪能するには、2人以上が必要なのだ。
ライター/横山由希路
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