MAIL MAGAZINE Vol.6 2019
利用者がはっきりと分かれた
都会の2つのオアシス
六本木・東京ミッドタウンの裏に大きな池がある。高層ビルや四季の花々が映り込む澄み切った水面を、アメンボが泳いで揺らしていく。ここは港区立檜町公園。その昔、檜の木が多いことから「檜屋敷」と異名をとった萩藩・毛利家による麻布下屋敷の庭園跡だ。1.4ヘクタールある広大な庭はかつて「清水亭」と呼ばれ、江戸を一望できる名園として栄えた。
檜町公園は2007年に東京ミッドタウンの開業とともに再整備された。池は2つあり、ミッドタウン側に循環水の湧き水ポイントがある小さい「上の池」と公園の半分の面積を占める「下の池」がある。「下の池」に注ぐせせらぎを人工的に作っており、「上の池」の脇には「小滝」が、コンパクトな渓流の先には「下の池」に注ぎ込む「中洲滝」がある。
公園の造りは「下の池」をぐるりと囲む和風回遊式庭園。白い花の立派な藤棚や池のほとりに栗の木でできた東屋もある。ジョギングコースでもある遊歩道の周りには、多くの草木が寿司詰め状態で植えられている。春はヤマザクラがピンク色に、秋はイロハモミジが真っ赤に公園を染め上げ、都内でも隠れた名所として知られる。
6月は、青やピンクといった色とりどりのガクアジサイが見ごろ。そのほか雄しべが花弁よりも長く、黄色い花を咲かせるビヨウヤナギ、小さい可憐な白花のガマズミも色を添える。またすべり台、ブランコなど、和モダンの遊具が魅力の芝生エリアは、6月28日まで草木の養生期間として一部白いシートが敷かれ、入場が規制されている。芝生に座りたい人は、ぜひ隣に位置する東京ミッドタウン敷地内の芝生広場で休むことをオススメする。
実は、檜町公園と芝生広場の両方に行ってみると、檜町公園の芝生エリアは日本人の親子ばかりで、芝生広場は多国籍の子どもが多いことに気づく。檜町公園では「危ないわよ」「気をつけなさい」と注意する日本人の親の声がするが、芝生広場では東南アジアやインド系のシッターさんが欧米人のお子さんを実に自由に遊ばせている。折り目正しい檜町公園と、あけっぴろげな芝生広場。都心のど真ん中で隣り合う公園と広場の違いを感じてほしい。ちなみに私は、芝生広場で大の字になって寝転がった。
ライター／横山由希路
