芸術性の高いプロカメラマンと 上手すぎるアマ写真家の作品が交差する場所
五輪に向け、六本木は街のあちこちが様変わりしている。六本木通り沿いの建物がメンテナンス工事を始めたり、突如姿を消して駐車場になっていたり。コンクリートを削る音は止むことがない。この地でオープンから12年、「静か」で「誰に気兼ねすることなく」、「無料で」待ち合わせできる路面店がある。それが東京ミッドタウンのFUJIFILM SQUAREだ。
FUJIFILM SQUAREは富士フイルム運営の写真展・ショールームスペースだ。銀座・数寄屋橋にあった富士フォトサロンが前身で、富士フイルムが2007年の東京ミッドタウン開業時に本社移転したタイミングで展示会場も移ってきた。会場には富士フイルムフォトサロン 東京、ミニギャラリー、写真歴史博物館の3つの展示スペースがある。
写真展は大きく分けて2つの意味合いがある。1つはプロ・アマ問わず作品を募り、優れた写真が飾られる「公募展」。2つめはFUJIFILM SQUARE主催の「企画展」だ。「公募展はアマチュアの作品でしょう?」と侮ることなかれ。富士フイルムの誇るプリント技術とライティングでショーアップされた作品は、どれもビビッドな色彩で観る者に迫る労作ばかりだ。また「企画展」は『写真の過去・現在・未来』を発信する観点から、写真の記録性や芸術性の感じられる作品を紹介。名だたる美術館に所蔵される作家の出品も多い。
この秋は、写真・文学・アート好きにはたまらない注目の企画展が同時開催する。富士フイルムフォトサロン 東京とミニギャラリーでは11月20日(水)まで、小林修写真展「司馬遼太郎『街道をゆく』の視点歩いた風土、見抜いた時代」が行われる。小林修は「週刊朝日」の「司馬遼太郎シリーズ」を13年にわたり担当したカメラマン。司馬作品の世界観を写真でよみがえらせる試みだ。
写真歴史博物館では12月27日(金)まで、今道子と佐藤時啓の連続企画展「覚醒する写真たち」が開催。今道子の出品は終了したが、引き続き佐藤時啓の展示が楽しめる。佐藤は1作品に13時間かけ、長時間露光で撮影された写真に“光”と“時間”を閉じ込める。今は版画から、佐藤は彫刻からキャリアをスタートした異色の作家。従来の写真家とは異なる発想で生み出された作品から「写真とは何か」を再考する。
ライター/横山由希路
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