MAIL MAGAZINE Vol.3 2021
PCの基盤からBTS、フィギュアまで。
カオスな名物ビルは今日も固定客を吸い込む
コロナ禍でも強い。とにかく強い。駅近のビルに、一人客がどんどん吸い込まれていく。秋葉原のラジオ会館がそれだ。昭和の時代から街を彩ってきた、黄色地に青と赤の字による「世界の ラジオ会館 秋葉原」の看板は、今も健在だ。
個人客のほとんどがアニメファンだ。目的がハッキリしているので、皆、総じて歩幅が広く、お目当ての店へグングンと進んでいく。ある男性の後に付いて行くと、2階の「アストップ」に着いた。ここはレンタルショーケースの店。個人が透明なアクリルケースのオーナーとなり、ケース内でコレクター商品を売っているのだ。フィギュア、トミカのほか、『鬼滅の刃』のトレーディングカードやAKB48のメンバーグッズを売る人も。値付けもオーナー次第で、この日は「全品表示価格より50%OFF」が貼られたケースが多かった。
5階は、1998年の進出からラジオ会館にサブカルファンを呼び込む「海洋堂」がある。訪れた日は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の公開直前だったため、店頭にエヴァのフィギュアがズラリ。また海洋堂がエヴァのフィギュアを扱って25周年になることから、今後発売予定の作品も展示されていた。そして「海洋堂」の右隣は「TRIO」。BTSやTWICEから、ももクロ、超特急まで、日韓のアイドルグッズが充実している。
昭和のラジオ会館を知る人は、ここまで読むと「昔ながらの部品の店はないのか」と落胆するかもしれない。ご安心あれ。1970年後半のマイコンブームから店を構える「若松通商」が、5階で営業中だ。PC基盤、半導体、コンデンサーにプラグやジャックまで、凄まじい数の商品が揃う。まったくディスプレイがされていない店頭のガラスケースは、放熱器などの商品置き場に使われており、他のアニメ関連の店舗と趣を異にするのが面白い。
一方、内装は令和風だが、昔からこの地でどっしりと構える店もある。2階にある業務用放送機器、プロオーディオの専門店の「トモカ電気」がそれだ。ステージ演出に欠かせないLED照明機器も多数揃い、店内はとにかく明るい。この日は放送関係者が、風切り音を低減するフサフサのマイクマフを購入していた。あのマイクマフを使う番組は何だろう。想像しながら、家路に就いた。
ライター／横山由希路
