外国人観光客から熱視線を浴びる有名神社
東京のある神社が“インスタ映え”すると、外国人観光客から人気だ。撮影している人をよく見てみると、孫悟空、ベジータ、ガチャピン、マリオ……。日本のアニメ、ゲーム、テレビ番組のキャラクターに扮したコスプレイヤーたちが、7~8人のグループになってポーズを決めている。
撮影地は神田明神。入口の随神門が、彼らのお気に入りスポットだ。総檜、入母屋造で二層建ての門は、主に朱色がベース。その他、エメラルドグリーン、群青色、金色、黒で配色され、その鮮やかさを見れば外国人客が背景として撮りたがるのも頷ける。さらに、門の外回りには朱雀、白虎、青龍、玄武の四神が、内側には古事記に出てくる「因幡の白兎」が彫刻として飾られている。自撮りが済んだコスプレイヤーたちは、四神をそれぞれアップで撮影する。どうも彼らからすると、神々もキャラクターに見えるらしい。
外国人コスプレイヤーたちは随神門での撮影を終えると退散してしまうが、門の先に見える総朱漆塗の御神殿もなかなかどうして立派だ。昭和9年(1934年)に竣功された本殿は、当時としては画期的な鉄骨鉄筋コンクリート造。正直、鉄骨鉄筋コンクリートと説明されなければ、ほとんどの人が木造と思うだろう。それもそのはず、伊東忠太、大江新太郎、佐藤功一といった近代神社建築や都市建築を代表する建築家が御神殿を手がけており、柱間を狭めるなどして木造建築の姿に極力近づける工夫がなされているのだ。
その他、境内の中には、意外なものが建立されている。銭形平次の碑だ。これは野村胡堂の『銭形平次捕物控』で、平次が恋女房であるお静と神田明神下台所町の長屋に住んでいたと描かれたことから、昭和45年(1970年)に建てられた。
かつて放映された時代劇ドラマ『銭形平次』では、主題歌で「花のお江戸は八百八町」と歌われた。江戸は、18世紀初頭には人口が100万人を超える世界有数の大都市に成長したが、実際に“八百八町”が存在したわけではない。それくらい世界に誇る大きな都市という比喩として使われている。
神田明神は“八百八町”の神ではないが、江戸と東京の生活や文化が凝縮された108の町々の神様として知られている。108の町の区域は想像以上に広い。東京・神田、日本橋、秋葉原をはじめ、大手町・丸の内のビジネス街、さらに旧神田市場(大田市場)から築地魚河岸市場まで広がる。
江戸に鎮座して1300年近くの歴史をもつ神田明神。東京の歴史にほんの少し思いを馳せながら、騙されたと思って山門、本殿を背にInstagramに写真をアップしてみよう。すぐに海外の人から“いいね!”されること請け合いだ。
ライター/横山由希路
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