全作品撮影OKのインスタ映えする展覧会
日本の美術館は周囲に迷惑をかけないよう静かに観ることを強要されるが、六本木で現在開催中の展覧会は、平日に興奮した子どもが館内を走り回っている。森美術館で来年4月1日(日)まで開催されるレアンドロ・エルリッヒ展「見ることのリアル」がそれだ。レアンドロ・エルリッヒは、世界の現代アート界をリードするアルゼンチン出身の作家で、日本だと金沢21世紀美術館に設置されている「スイミング・プール」でよく知られている。
今回はエルリッヒの四半世紀にわたる活動を紹介したもので、新作を含む44点が展示されている。日本初公開の作品が約8割。会場外の常設展示作品については写真や模型での説明となるが、その他はすべて体感型インスタレーション作品で、撮影が許されている。
エルリッヒの作品は、アートを観る私たちの習慣や既成概念、常識を疑うものが多い。作品を観る我々が、他者の行動や生活をのぞき見るかのような展示が目立つ。例えば新作の「教室」は、廃校の教室が舞台。ガラスで仕切られた2つの部屋の一方に踏み入れると、ガラス越しに自分の姿が東京ディズニーランドの「ホーンテッドマンション」のように映り込み、廃墟の教室にたたずむ自分を垣間見ることになる。
ハイライトは、本展のために新バージョンとなった「建物」。「スパイダーマンのように、重力に逆らってベランダや壁にぶら下がりたい」という願いを叶えてくれる参加型インスタレーションだ。床に横たわった集合住宅の壁面に寝っ転がると、その姿が斜め45度に立てかけられた鏡に映し出され、まるでアクション映画のような写真を撮ることができる。大人も子どもも皆、夢中になってポーズを取り、InstagramやTwitterにアップしていた。
なお、老若男女が楽しめる体験型展示の本展は、1人より2人、2人より3人で観る方が断然面白い。お互いを写真で撮りあう場面が多いからだ。毎週水曜日は3人以上で来館すると1人100円ずつ入場料が割引になるため、曜日を狙っていくのをおすすめしたい。
ライター/横山由希路
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