現代の感性で陶磁器を見つめる好企画の展覧会
東京・日比谷の出光美術館は、東洋古美術において日本有数の所蔵数を誇る。主な客層は、やはり古美術に造詣の深い年配の方々。だが、現在3月25日(日)まで開催されている「色絵 Japan CUTE!」は、見る者の年齢を一切選ばない好企画となっている。
色絵は、江戸時代に開花したカラフルな焼きもののこと。古九谷、柿右衛門、鍋島といった磁器や、野々村仁清や尾形乾山らの京焼などを指す。本展の特徴は「色絵はとにかく可愛くて面白い」というわかりやすい切り口で、全185点をたっぷりと見せていることだ。
今ではテレビCMから感じられる季節を、江戸時代の殿様は器から感じていた。鍋島に色付けされた藍色一つとっても、春に献上した藍は薄いが、夏の藍は濃い。濃淡のついた藍色が、夏の海辺のダイナミックな波をよく表している。また殿様が直接知らない庶民の暮らしが器に描かれ、高級磁器がかわら版のような役割も果たしていた。
注目すべきは、ゴッホの油絵を想起させる古九谷のゾーンだ。ビリジアングリーン、黄褐色、藍色などのこっくりとした色合いが、見る者の目に飛び込んでくる。ゴッホが精神病にかかった頃に描いた『星月夜 -糸杉と村-』や、伊藤潤二のホラー漫画『うずまき』にも似たデザインの皿もあった。空間恐怖症かと思うほど、大皿にところ狭しとうずまきが描かれていて、アバンギャルドな構図が目を引いた。
また、緻密で豪奢なデザインの古伊万里は、輸出用として生産され、世界各地でその図案や質感が模倣された。模倣というと聞こえが悪いかもしれないが、土や窯などの環境がまったく違うにもかかわらず、各国屈指の職人が古伊万里の製品を実際に見て、忠実に真似てモノにしようした貪欲さは驚嘆に値する。「色絵 Japan CUTE!」では、古伊万里の「色絵菊花文輪花皿」が中国の景鎮窯、イギリスのダービー窯やウースター窯、ドイツのマイセン窯にどう伝わったかなど、並列展示していて面白い。
なお、学芸員自ら「列品解説」をする日もある。実際に色絵を見ながら、そこに秘められた季節感、ファッション性、文学性、デザイン力を紐解いていく。
ライター/横山由希路
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