地元の人の生活音が心地良い。 大正時代から続く神戸屈指の商店街
右・左・右・左と、首を振るのに忙しい場所が神戸にある。阪急・神戸三宮から梅田方面へ2駅先にある王子公園駅。ここは、大正時代から続く神戸屈指の商店街・水道筋商店街の最寄り駅だ。道行く人はカートを引きながらゆっくり歩く。動きはスローなのだが、左右の店の値段を瞬時に確認しているので、顔つきは皆スナイパーみたいだ。ゆるゆる動く「ゴルゴ13」がたくさんいるようで、見ていて面白い。
お豆腐屋さん、お花屋さん、八百屋さん、串カツ屋さん……と、ここには500以上の商店が店を構える。実は水道筋商店街とは8つの商店街と4つの市場の総称だ。駅改札を出て、右手すぐに「王子公園駅前商店会」。そして「水道筋ひだまり商店街」「水道筋6丁目商店街」と続き、やがて「エルナード水道筋」の大きなアーケードが見える。
おばあちゃんが一定の間隔を空けて突く杖の音、カートのタイヤ音、商店街のゴミを運ぶワゴンの音、ふいに駆け出す学校帰りの低学年の子の叫び声。大正、昭和、平成、令和と時代を経ても変わらない音が、アーケード内に響いている。
大人の足で「エルナード水道筋」を200歩ほど歩くと、中間地点に恵比寿さんがいる。テープが回っているのだろう、「すいどーばしえびすじゃ! はっはっはっ!」とずっと笑っている。その対面に「エルナード水道筋」で最も集客を誇る「フレッシュ・フィールド」がある。5軒ぶち抜きの大型店舗は、野菜・肉・魚を扱う。小松菜50円台、水菜60円台。円安で家計が苦しい昨今、ありがたい値段だ。
「エルナード水道筋」には昔ながらの喫茶店が5軒あり、どこも混んでいる。ふらっと寄った人にオススメしたいのは、「フレッシュ・フィールド」の直営店であるテイクアウトコーヒー専門店「カフェラーナ」だ。「フレッシュ・フィールド」の角を「灘センター商店街」に沿って、2~3軒進んだところにある。ここは「神戸上島義弘ブレンド」の豆を扱い、深煎り、浅煎りなども楽しめる。いただいたのは、地元のコーヒー好きが飲むビターブレンドのアイスコーヒー。店前の椅子に座ると、下校中の子どもたちがはしゃぎながら通る。生活音をBGMに飲むコーヒーはいつもより深く、でもスッキリと喉を潤した。
ライター/横山由希路
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