絶妙な甘さが疲れを忘れさせ、脳が目覚める。 やみつきになるトーストで朝食を
日比谷のお隣、有楽町という街は、昔からエスニック料理と相性がいい。古くは昭和初期の建物で営業していたタイスキの名店・コカレストラン。そして平成以降は、東京国際フォーラムの屋外スペースで繰り広げられる「ネオ屋台村」がこの地のエスニック料理の幅を広げてきた。東南アジア、東アジアはもちろん、アフリカ、中東など、国際色豊かなキッチンカーが集結し、都心で働く会社員たちはランチの時間になると、気に入った店に行列を作る。
2021年6月、東京国際フォーラムに屋台村とは異なったエスニック料理店が誕生した。Ya Kun Kaya Toast(ヤ クン カヤ トースト)。1936年にシンガポールで誕生したトーストとコーヒーの店だ。営業時間は朝8時から夜8時まで。コンパクトな店だが、屋外のテラス席は21席、店内も22席ある。
カヤトーストとは、シンガポールのローカルフードだ。砂糖、卵、ココナッツミルク、ハーブからなるカヤジャムがたっぷりと塗られた薄手のトーストを、なんと温泉卵にからめて食べる。温泉卵の上には醤油のようなダークソースやホワイトペッパーをお好みでかけて楽しむ。
“お醤油の国”こと日本に住む私の感覚だと、さぞかし甘じょっぱい味なんだろうなと、食べる前は予想していた。でも一口食べると、違った。ホッとする甘さと卵のまろやかさで、正直いくらでも食べられる。カヤジャムの甘さは、上品な和菓子とほぼ同じだ。黒々としたダークソースはぽってりとした口当たりで卵とよく絡み、醤油のような塩分がほぼなく、温泉卵にコクが出る味に仕上がっている。またホワイトペッパーは、天下一品のこってりラーメンを頼んだ時に、胡椒をバシがけすると、不思議とスープの味が粒立ってくるあの感じとでも言うのだろうか。温泉卵の味の輪郭を際立たせてくれる。
カヤトーストに私は、コンデスミルクとエバミルクを加えたコピと呼ばれるコーヒーを添えた。たっぷり空気を含ませるように、店員さんは淹れたてのコーヒーを高い位置からなみなみと注ぐ。コンデスミルクの甘さがじわっと疲れた脳に沁みる。
なおこの店はWi-Fi、充電完備のため、会社員も旅行客も押し寄せる。携帯と頭の充電を兼ねて、ちょびっと寄ってみませんか?
ライター/横山由希路
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