和菓子なのにお酒にピッタリ。 徳川将軍家へ献上していた老舗和菓子店の商品とは
東京メトロ銀座線・東西線の日本橋駅。B3出口を出て、目の前の日本橋島屋を背にして、丸善 日本橋店を右手に見ながら東京駅方面へ進むと、左手に木造りの構えの小さな店舗がある。引き戸の右側に季節の和菓子が美しくディスプレイされているこの店は、「江戸風御菓子司 日本橋 長門」。八代将軍・吉宗の代から菓子商を営み、徳川将軍家への献上菓子「松風」で知られる老舗和菓子店だ。
「松風」とはパリッとした食感の一枚菓子で、縦20センチ弱×横15センチ弱の箱に収まっている。「松風」を真横から眺めると、∞(無限大)のような形。厚さ数ミリの一枚菓子を流線型に仕立てた優雅さに見惚れる。この「松風」は一度売り出されると予約が殺到するため、食べてみたい人は「長門」の公式サイトで売り出し時期の確認をオススメする。
「松風」以外でオススメしたいのは、看板商品の「久寿もち」。一般的に関東のくず餅は乳白色でしっかりとした固さがあるが、「長門」の「久寿もち」は高価なわらび粉を使用しているせいか黒々としており、暑い夏に冷蔵庫で冷やしてももっちりとした食感がずっと続く。口の中に入れるとトゥルンとした感触で、噛むうちに徐々に溶け、喉越しも涼やか。上にかかったきな粉の香ばしさが鼻に抜けて、自宅で作った麦茶でさえも美味しく感じられる。
もう1つ紹介したいのは「久寿もち」同様、夕方には売り切れてしまう「切羊羹」だ。竹の皮の包みを開けると、厚さ1センチで6センチ四方の羊羹が重なるように3つ並べられている。よくよく見ると、6センチ四方の羊羹は1センチごとに切れ目が入っており、短冊状にいただける。
この「切羊羹」の食感がなんとも不思議だ。通常の羊羹は冷やし固めて作るため、ある程度の固さがあるが、「切羊羹」は蒸して作られているため、「久寿もち」同様、冷蔵庫に入れてもモチモチとした食感が保たれたまま。しかもさっぱりとした味わいなので、この夏、私はビールのお供として何度この「切羊羹」をいただいたことか。
出張や帰省で東京駅から新幹線を利用する方は、ぜひ「長門」に。八重洲北口から徒歩2分で、最高の江戸土産とビールのお供を手にできる。
ライター/横山由希路
|